1 どの弁護士に頼む?
司法司法制度改革により、ここ数年で弁護士の数は急激に増加しました。日弁連の統計資料によると、2002年の弁護士数は18,000名強でしたが、このコラムを執筆している2023年2月の時点で、日弁連のデータベースには44,000名を超える弁護士が登録されています。この20年で、およそ2.5倍に増加したことになります。
弁護士へのアクセスの仕方も、時代の変化とともに様変わりしました。かつては、弁護士というと堅苦しく敷居の高いイメージで、「飛び込み」で法律相談にいくことには躊躇があったという話を聞きます。
しかし、そのような堅い弁護士のイメージは過去のものとなりました。2000年に弁護士の広告が本格的に解禁され、弁護士が自らメディアを用いて情報発信する傾向が顕著になり、ここ数年でテレビやyoutubeに出演して活躍される弁護士も一気に増えました。
現在、インターネット上には多くの弁護士や法律事務所に関する情報であふれており、市民や企業が弁護士にアクセスすることを容易にするためのポータルサイトも充実しています。知り合いに弁護士がいるよ、という方も多くなったのではないでしょうか。
このような現代社会において、弁護士を頼ろうとする方は、「どのようにして弁護士にアクセスしたらよいのか」というよりも、「たくさんいる弁護士の中から、どの弁護士を選んだらよいのか」という点を知りたいのではないかと思います。
そこで、今回は、「世の中にはたくさん弁護士がいるけど、誰に頼んだらよいのか?」という疑問について、弁護士業界の内情を知る立場から、こたえてみたいと思います。
2 最も重要な要素は「相性」
弁護士を選ぶ上でよくいわれていることは、そのジャンルが得意な弁護士を選ぶことだと思います。弁護士の業務は幅広いので、とても重要な視点です。
この点については別の機会に書きたいと思いますが、今回強調しておきたいのは、「自分と相性の合う弁護士を選びましょう!」ということです。
相性が悪ければ友人や恋人関係が長く続かないのと同じことです。弁護士も人間で様々な個性がありますから、相性が悪ければお互い嫌な思いをすることになる、という意識を持っておいた方がよいのです。
例えば、法律相談の場面で、じっくり時間をかけて話を聞き、相談者の心情に寄り添うタイプの弁護士もあれば、要領よくポイントを押えて端的に問題意識を示すタイプの弁護士もいます。ユーモアを交えてリラックスした雰囲気を作り出すことが上手なタイプもあれば、寡黙だが真面目に話を聞いてくれるタイプもあるでしょう。
仕事の進め方についても、マメに連絡をくれた方がよいのか、細かいことは弁護士にお任せしてしまいたいと思うのかは、相談する方の性格によって差がでるところだと思います。
これらのタイプはどれが良い悪いではなく、性格の相性の問題だと思います。弁護士と相性が合わないと、どんなに知識と経験豊富な弁護士が担当したとしても、性格の不一致から相談する側は、ささいな言動が不満に感じます。せっかく法律相談にいったのに、さらなるストレスを抱えてしまう、という悪循環に陥ることになってしまいます。
残念なことに、そのようなケースは頻繁に発生しているのです。
3 「柔軟性」をもった弁護士
では、自分と相性の良い弁護士を探すためには、どうしたらよいのでしょうか。
すぐに性格や人となりを見抜くことは、なかなか難しいことです。そのため、まずは、自分のことをよく知っている友人・知人から、自分の性格に合った弁護士を紹介してもらう方法が、手堅いと思います。
しかし、なかなか、そのような紹介の機会に恵まれないこともあるでしょう。
そのようなときは、インターネット等で調べて、自分からアクセスしてみることになると思います。そのときに注目してほしいポイントは、相談しようとする弁護士が、相談者の性格に合わせようとする「柔軟性」をもっているかどうかです。
私は、世の中の弁護士には、相手との性格の不一致があることを認識して、それを解消しようと努力する弁護士と、そうではない弁護士がいると思っています。そして、「柔軟性」をもち、相談者の性格に合わせて自分をコントールできる弁護士こそ、真のプロフェッショナルだと思っています。
これを強く意識している弁護士は、実はそこまで多くないのかもしれません。己の信念を譲ることは容易なことではないですし、己の信念に従って仕事と向き合うことも、それはそれで立派なことです。否定するようなことではありません。ただ、そのような性格では、相談をする側に大きなストレスを与えるように思います。
4 「柔軟性」を見極める
ということで、弁護士探しの際には、専門性はもちろんのこと、自分の性格に合わせてくれそうな「柔軟性」をもっているか?という視点が一番大事だと思います。
では、「柔軟性」をもっている弁護士かどうかはどのように見極めたらよいでしょうか。企業の人事の経験がある方であれば見極めるノウハウをもっているかもしれません。しかし、そうではない場合には、端的に、「私と意見が合わないときは、どのように対応されますか」といった、直球の質問をぶつけてみるのもよいと思います。
その答え方には、結構、弁護士の性格が表れてくるからです。「納得していただけるまで時間をかけて説明をします」「他のやり方を提案します」「意見が合わない原因を一緒に考えます」「意見が合わないときは、辞任させていただきます」など、同じようなことでも、弁護士によって微妙なニュアンスの違いが出てくると思います。
正解は人それぞれで、自分にとって、「ああ、私の性格のことを考えてくれているな」と感じる回答を得ることができれば、その弁護士と進めてみてもよいのではないでしょうか。
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